天ノ視点 -DAC比較試聴-

皆様こんにちは。
東京も梅雨入りしましたね。
この梅雨が明けるといよいよ夏本番ですか…

さて、先日行ったDAC比較試聴会にてご用意をした製品達のレビューを試聴会のまとめと合わせてご紹介したいと思います。

<DAVE同価格帯 DAC比較試聴>
4Fの定番DACとなっているCHORDのDAVEと同価格帯のDAC類を集めました。DAC類と書いたのは、単純にDACとして以外にも使う事が出来るので、その仕様等も併せてご紹介したいと思います。

・Entry No,1 CHORD DAVE 定価¥1,500,000(別)
DAVE
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プレゼンター:タイムロード 村上氏(右側)
発売から早いもので3年の月日が経ち、そろそろDAVE2の登場が密かに騒がれていますが、メーカーとしてはその予定はないとの事でしたので、安心してご注文下さい(?)
足の速いデジタル製品の中でこれだけ長い間、第一線を張っている稀有な存在です。自社開発の集積回路を搭載し、強力な処理能力を持ち、コンパクトなサイズ、近未来的なデザインで人気の製品となりました。さて、今回の比較試聴会はDAVEとの比較試聴が大きな目的ではありましたので、トップバッターをやってもらいました。
<DAVEの特長>
すでに4Fでは沢山レビューしていますし、色々なところで引っ張りだこのDAVEなので今更感はありますが、あえて特長を書きますと…
・独自のFPGAを搭載し、164,000タップという驚異的な情報処理能力を可能にしました。この処理能力の高さがある為、発売から3年が経過しても色あせることが無い製品です。
・コンパクトなサイズ、独特のデザイン性。やはり、このサイズ感は選ばれる要因ではないでしょうか。どうしてもハイエンド製品は上位機になればなるほど、大きくなりがちですが、DAC64時代から受け継がれるこのサイズと、デザインには魅力を感じます。
<サウンド>
DAVEのサウンドは、人それぞれ少し異なります。私の印象としては、細かい情報量の中に少し広がりがあり、しっかりとコシの座った音で、聴きやすいという印象です。程よく厚みがあり、音楽らしさと感じされてくれます。強い個性はあまりなく、ある程度、どんな音楽でも、どんなシステムでも合わせやすいのではないでしょうか。

Entry No,2 MSB Technology Discrete DAC ¥1,450,000
 (+Quad DSD&MQA USB入力¥290,000)
Discreat
創業1986年。CDプレーヤーの登場から数年後に創業されたMSB。most significant bit=最上位bitが社名の由来とのことです。日本では数年前から扱いが始まり、今回ご用意をしたDiscreteDACの前身となるAnalogDACは、DAVEともよく比較をしました。電源の別筐体化や、モジュール式を採用している等、ハイエンドオーディオとしてのこだわりを見せつつ、ユーザーライクな側面を感じさせてくれる仕様に好感が持てます。
<DiscreteDACの特長>
上位機種である「Reference DAC」や「SELECT DAC」で得た技術が採用され、以前のモデルよりも音質の向上が図られました。上記にも書きましたが、MSBは固定入力として [ Coax RCA ] [ AES/EBU XLR ] [ Toslink x2 ] を搭載していますが、オプションとしてQuad DSD&MQA USB 、Audio Renderer (Mark 2)を選ぶことが出来ます。今回の試聴会では、USBの入力を付けた状態でデモをしました。この入力モジュールは上位モデルと同じものを使用しているとの事ですので、音質的にも期待が持てます。また、この価格帯では珍しく別筐体電源が採用されていますが、これもオプションでもう一つパワーサプライをプラスさせて、より電源を強化することが出来ます。本体自体は、以前のモデルに比べると、少し厚みを増しましたが、それでも薄型の部類には入ると思います。少し残念なところとしては、AudioRendererを使用した際に、uPNPを採用していますが、自社のアプリケーションが無いため、有料の再生ソフトを使用する必要があります。オープンホームに対応していれば、文句なしなんですが…
<サウンド>
今回ご用意した製品の中で唯一のアメリカメーカーです。サウンドも他機種に比べると、少し力強さや芯の強さ、輪郭の明瞭度のようなものがあり、この方向性のサウンドを求める方は必聴の一機種だと感じました。面白いのは、別筐体電源やスパイク仕様が効いているのか、音楽が荒くならないところに好感をもてます。

Entry No,3 dCS Bartok DAC ¥1,800,000
Bartok
デジタル関連のハイエンドメーカーとして、日本でも高い人気を誇るdCS。現在は世界トップクラスのシステムVivaldi、中堅機(?)Rossini、そして、今回のBartokをラインナップしています。CHORD等と同様にFPGAを以前から採用していて、チップを使用している他社DACとの差別化が図られています。通常のDACとして使用はもちろん、LAN接続によるネットワーク再生、roon対応、Spotify(スポティファイ)コネクトにも対応している万能機と言えるのではないでしょうか。デザインは、上記機とは異なり流曲線は採用せず、シンプルな長方形の箱が採用されています。しかし、それでもしっかり存在感を感じるところはさすがでしょうか。
<BartokDACの特長>
老舗デジタル系ハイエンドメーカーの新機種として注目度の高いBartokDAC。上記の通り、色々な再生方法に対応しているところが魅力的です。一口にハイエンドDACと言っても、音質だけではなく、こういった機能性が充実していることによって、より楽しいミュージックライフにつながるのではないでしょうか。MSB同様にuPNP再生が可能ですが、dCSは以前から自社アプリを配信していました。このアプリも以前は、dCS各モデルに対し、一つのアプリが存在していましたが、新しいアプリでそれらが統合され、さらに使いやすく、安定した再生を可能にしています。アプリ内で本体の設定も可能になり、ネットワーク再生においてdCSの弱点であった部分をカバーすることが出来ました。
<サウンド>
dCSらしいしなやかさや、色気はBartokDACにも引き継がれています。広がりもあり、ボーカルものやクラシックに合わせやすい印象ですが、MSBやCHORD同様に自社開発FPGAの情報量の高さがあるので、万能性を感じます。上位機種に比べると、少し音楽の厚みが薄れる印象ですが、それでもこの価格帯のDACの中では、充分に聴きごたえのあるDACです。

Entry No,4 ASOYAJI AUDIO Minimal DAC-Du ¥1,500,000
ASOYAJI
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プレゼンター:ASOYAJI AUDIO 廣瀬氏
今回のDAC比較試聴会の台風の目になるか…。という意気込みでご用意させて頂きましたASOYAJI AUDIO。代表の廣瀬氏お一人で設計から組み立てまで行っている日本のガレージメーカーです。もともと、銀行マンをされていましたがオーディオのデジタル系ブログで人気のある方で、自身でDACを作られていたのを企業・製品化されたとの事です。私たちとしても未知のメーカーですので、このASOYAJI AUDIOが国産の雄ESOTERICや海外ハイエンドメーカーと比較をしたときにどのような音楽を聴かせてくれるのか…。MinimalDAC-DuはDAVE同様にネットワーク関連の機能はなく、純粋にDACとして使用します。
<MinimalDAC-DUの特長>
「音質にこだわる」という点は各メーカー共通していますが、そのこだわり方が、独特のもの。まず、特長その①としては「DACチップ音源」の究極を目指している事。DACチップには旭化成製AK4497を採用していますが、出力段に抵抗、コンデンサ、オペアンプ等の原音の劣化につながるものを使用しない事によって、DACチップの音源をそのまま再生する事を目的としています。特長その②として日立金属性のファインメット・トランスを使用することによって、信号の歪やノイズを吸収します。これは、広瀬氏曰く、ファインメットの特性との事。日本のメーカーがこういった優れたパーツを作っているという事も嬉しいところですね。特長その③はバッテリー駆動を採用している事。MSB同様に通常のAC電源とアイソレートすることによってそれらからのノイズを除去する目的があります。この三つの大きな特長が音楽にどのような影響をもたらすのか。
<サウンド>
上記の特性からか、その音はとても自然に聴こえます。優しく耳当たりが良い。他社と比べると、ほんの少し高域の伸びが欲しいところではありますが、逆に、それがこの聴きやすさを表しているのやもしれません。良い意味で緊張感が薄く、ゆっくりと音楽を楽しめる印象です。極限的にノイズを排除して、チップの音質を損なうことなく再生してくれます。FPGAを採用せずとも、ここまでクオリティの高いサウンドを再現できるというところにASOYAJI AUDIOのこだわりを感じます。

Entry No,5 ESOTERIC N-01 ¥1,400,000
N01
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プレゼンター:ESOTERIC 佐伯氏
ESOTERICはDACとしては同価格帯のD-02Xという製品がありますが、今回は、dCSやMSBの製品特製に合わせてN-01をご用意させて頂きました。大手国産ハイエンドメーカーの中で、データ再生において、世界トップクラスの技術力を持つESOTERIC。音質もさることながら、roonやMQA、Spotifyコネクトに対応し、機能面においてもその名に恥じない充実性を持っています。
<N-01の特長>
上位SACD/CDプレーヤーのGrandiosoK1に使用されたDACモジュールが、そのまま使用されています。先日FPGAを搭載したフラッグシップモデルが登場しましたが、本モデルに関しては、以前からESOTERICが採用している旭化成製のAK4497を搭載しています。
ESOTERIC webサイトより↓↓↓
デバイスには旭化成エレクトロニクス社32bitプレミアムDACデバイスAK4497にハイエンドオペアンプ新日本無線MUSES03を組み合わせて使用。チャンネルあたり差動8回路のパラレル/ディファレンシャル回路構成とし、圧倒的なリニアリティと低歪み化を実現。D/Aコンバーター部は、電源トランスも左右独立させ、チャンネルごとに8つの電源レギュレーターを各回路の直近に配置し、クリーンで安定性の高い電源供給能力を獲得しました。
…と、さすがESOTERICといった感じの贅沢な仕様になっています。DAC部分だけではなく、剛性の高いアルミ筐体や、電源部等、ハイエンドの王道を行くようなネットワークプレーヤーです。
<サウンド>
「ESOTERICの音は硬い」と印象を持っている方は少なくないはず。私も以前は同様の印象を持っていて、なかなかシステムを選ぶなぁと思っていました。しかし、ESOTERICはGrandiosoの登場以降、硬さは薄くなり、情報量の緻密さが全面に感じられるようになりました。国産メーカーらしい安定した音色を持っていて、音楽の抑揚が上手く表現されています。数少ない大手国産ハイエンドメーカーのネットワークプレーヤーですので、N-01に限らず、今後の新製品等にも期待ですね。


<総じて…>
今回のDAC比較試聴会ですが、私天野の思惑としては、4Fの定番DACになっているCHORDのDAVEが発売から3年が経過して、新たなライバル機が登場するか?というものがありました。今回、比較を行った4社はいずれも絶対的なクオリティがしっかりあり、あとは皆様のシステムや求めるサウンドで決まってくるのかなと感じました。あえて、それぞれをジャンルに分ければ、ポップスやジャズ・ロック等のスタジオ録音系はMSB・DAVE、クラシックやゆっくり聴きたいボーカル等はASOYAJI ・dCS、オールマイティにESOTERICといった所でしょうか。あくまで私の印象ですよ。
以前のブログでも書きましたが、2・3年前までのスペック競争が一段落して、アンプ等と同じように、各社のキャラクターで選んで頂けると思います。
また、今回はミュージックサーバーのfidataをフロントに使用しましたが、CD等のトランスポートを接続したい方や、レンダラー機能を利用したネットワークプレーヤーとして使いたいかた、PCを接続した再生等、用途は様々あると思います。その時はその時で選択を変わってくると思ます。特にレンダラー機能に関しては、各社の再生ソフトや使い勝手の部分も大きく影響してくると思います。