今回はSonus faberのスピーカーIL CREMONESEをご紹介させていただきます。
Sonus faber IL CREMONESE ¥5,500,000(税別)
フィニッシュ Red、Walnut
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何度かレポートをお届けしようかと思っておりましたが、私が紹介させていただくには少し価格面で躊躇しておりました。しかし、先日設計者のパオロ・テッツォン氏とお会いすることが出来ましたので、ご紹介させていただこうと思った次第です。
Sonus faberとの出会いは入社時のGuarneri Homageでした。デザイン性、音楽性に引き込まれたのを今でも覚えております。それからGuarneri Memento、Guarneri Evolution、そして昨年発売のGuarneri Traditionを追いかけてきました。
Guarneri Memento 試聴レポートはこちらのVOL.35
Guarneri Evolution 製品レポートはこちら
Guarneri Tradition 試聴レポートはこちら、開墾編はこちら
ステレオサウンド誌では、198号にて製品紹介があり、更に199号ではパオロ氏、及び本国の工場の記事も掲載されております。
Sonus faberのスタートは今は亡きフランコ・セルブリン氏であることは有名ですが、そこに弟子入りしたのが、この設計者でもあるパオロ氏になります。フランコ・セルブリン氏から引き継ぎ、多くのハイエンドスピーカーを世に輩出してきました。
その代表作がThe Sonus faber
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当店7Fに常設展示をしており、また弊社マラソン試聴会でも店長の川又が使用いたしまし
た。重さが305kg、価格が2300万ということでマラソン試聴会実行員としてステージが大
丈夫なのか心配した記憶がございます。
*今では生産終了になっております。
それから
Aida ¥12,500,000
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Lilium ¥8,600,000
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を発売しております。
この時期にはまだあの名機のひとつでもあるStradivari Homageも存在しておりました。
Stradivari Homage
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そして2016年に今回紹介させていただく、IL CREMONESEが発表されました。デザインは違いますが、価格的にStradivari Homageの後継モデルでもあり、Aida、Liliumの廉価モデルということになります。
製品の仕様
形式 :3.5ウェイ・6スピーカー
使用ユニット:
ツィーター :28mm ドーム型
ミッドレンジ :180mm コーン型
ウーファー :180mm コーン型×2
スーパーウーファー:220mm コーン型×2
クロスオーバー :80Hz/250Hz/2.5kHz
出力音圧レベル :92db
公称インピーダンス:4Ω
スピーカー端子 :バイワイヤリング
外形寸法 :W399 × H1450 × D622
重量 :84kg
仕上げ :Red、Walnut
正面から見るとその存在を見落としてしまいますが、サイドのゴムのサランネットの奥に
サブウーファーとして220mmのユニット2基が装備されております。
このIL CREMONESEは左右同じスピーカーではなく、片側にサブウーファーが取り付けられ
ております。基本的にはサブウーファーが内に来るようにセッティングします。
ツィーターの振動板中央に取り付けられている金属部分ですが、イコライザー(アローポイントDAD)となっており、手作業で取り付けられております。
またミッドレンジのこのバッジも同様に手作業で取り付けられているとのことです。
本体を支えるベース部分、スパイクにもこだわりがあり、前後に1つずつ、左右に1つずつの径4本のスパイクになっております。
仕上げはRed、Walnut。非常に迷うところではないかと思います。
こちらは内部構造となります。
それでは、試聴レポートに入ります。
使用機材
プリアンプ Constellation Audio PICTOR ¥2,400,000(税別)
パワーアンプ Constellation Audio TAURUS ¥2,700,000(税別)
ネットワークプレーヤー ESOTERIC N-01 ¥1,400,000(税別)
Sonus faberを試聴するにあたり、私の中で印象深い音源はデュトワ指揮モントリオール交響楽団のサンサーンス交響曲第3番です。以前Stradivari Homageで聴いたこの曲が今でも耳に残っており基準になっているところがあります。
低域の量感、ステージ感、そしてStradivariよりも特に立体感を感じることができました。
Stradiveri Homageは横の幅が広く、広いステージ感を出すことができましたが、このIL CREMONESEもそれに劣らない広がりも持ち合わせております。低域の沈み込みに関しては、Stradiveri Homageより下まで出ているように感じました。ちょっとした艶も残しつつ、しっかりとした音像定位はStradivari Homage以上に感じます。
ヒラリー・ハーンのバッハの無伴奏では、色艶といった面でも申し分なく、音のつながりが良くSonus faberらしさもしっかり出ております。良い意味で少し大人になった印象も持ちました。
オーケーストラでは前後感を感じましたが、ソロのバイオリンでは少し音像が前に出る印象です。
女性VOCALも数曲試聴しましたが、メロディ・ガルドーのような渋い声から、チャカ・カーンのようなソウルフルな歌い方。そしてノラ・ジョーンズまで何を試聴しても違和感なく、共通して華を感じることが出来ました。Sonus faberのファンはクラシックを好まれるお客様が多いことは事実ですが、女性VOCALも含めた人の声を好まれるお客様も多いのはこの華を感じていらっしゃるからだと思います。
ジャズなども素直に聞けますが、やはりステージを広く感じさせるせいか、リアルという感じよりも、雰囲気で聞かせるイメージです。ただその場合はスピーカーの角度で調整すると良いかもしれません。設計者のパオロ氏のセッティングではスピーカーのふり角度は強めのようです。
どうしても全体的にはスケール感があり、艶っぽく仕上げておりますが、以前よりもオールジャンル楽しめるスピーカーだと思います。
先日設計者のパオロ氏に話を伺いましたが、本人はアナログが好きで、更にプログレッシブロックもかなり好きだということでした。そう聞かされるとSonus faberの音の変貌は理解できますが、その中でまた新しい世界にたどり着き、完成させたのがこのIL CREMONESEではないかと思います。
先日より試聴室に設置して色々と試聴しましたが、私個人的にSonus faberのスピーカーラインナップの中で特に自分の肌に合うモデルだということを改めて再確認しました。
何がそうさせているかというと、おそらく聞き慣れた音がするということに他なりません。私個人的にはフラッグシップのモデルも含めて、新生Sonus faberサウンドということで、新しい世界の音を作り出しているように感じておりました。それはそれで良いのですが、自分の中で作り出したSonus faberのイメージは薄くなっている印象を持っておりました。しかしこのIL CREMONESEを最初に聞いた時に非常に懐かしさを感じました。それはフランコ・セルブリン時代の音色が聞こえてきたからだと思います。生ではなく作った音かもしれません。ただその独特な響きがやはり個性として多くのお客様に愛されたのだと思います。
名機Stradivari Homageは今でも多くのお客様にご使用いただいておりますが、このIL CREMONESEであれば私は代替えとしてだけではなく、十分に後継モデルとして通用すると思いますし、それ以上の感動もあると思っております。
パオロ氏が語っておりますが、現時点では「自分の中での最高傑作」
これは私も同感です。
もちろんこれを継承したTraditionシリーズも高く評価しております。特にAmati Traditionは
私の中のどこかにあったSonus faber = ブックシェルフのイメージを良い意味で壊してくれました。
パオロ氏と私は年齢もさほど変わりませんので、今後も彼の作品をしっかり応援していきたいとともに、もっと素晴らしい製品を日本のお客様に届けて欲しいと思っております。
常時展示ではございませんが、リクエストがあればご用意させていただきます。
Dynamic audio 島 健悟
追伸
先日パオロ氏が来日した時のツーショットです。